911の恋迷路
「僕は今年22なんです」
(若いな、やっぱり)
「10年前の兄とおんなじです」
(そっか……)
果歩はあの頃の自分は本当に若かったと思う。
今年、とうとう30才になる。人生の先輩方は30からが楽しいよ、なんて諭してくれるけれど。
(20代が過ぎるの、やっぱ、さみしいよ)
馬鹿なことばかりしていた学生時代。合コンで陵くんと出合い、初デート。
2人は東京でそのまま就職した。
社会人になって、そしてずっと一緒にいるんだと何となく思っていたのだ。
「9・11の追悼式、ニュースでしてますよ」
窓から道行くカップルを眺めていたら、隣から声がかかった。
スマホを果歩に見せながら
「兄とおんなじ歳か……」
慎のつぶやきが、もれる。