911の恋迷路
沼田慎<慎視点>
品川駅に着いたのは18時半過ぎだった。
山手線の混む時間にストライクという感じで到着する。人の背中に挟まれる。
慎は改札を出て駅の出口に向かった。
「今夜の予定には間に合いそうかな」
新幹線乗り場に向かう人の波をくぐって駅前に出る。
駅前にある、雑居ビルの一室が慎のオフィスだった。
窓際の上座に社長席があるこじんまりとしたオフィス。
社長は在室していた。
窓から景色を見ながらコーヒーを飲んでいる。
「ただいま帰りました」
「おう」
マグカップ片手に社長が振り返る。
「コーヒー、いるか?」
いそいそと立ち上がり、社長自らコーヒーメーカーの前に立つ。
(気さくなオッサンだよな)
「すんません」
慎はデスクにカバンを置く。