911の恋迷路
果歩と隼人<果歩視点>
慎と別れてから、果歩はぼんやりしていたみたいだ。
下車する池袋駅まで、いつもなら携帯を必ず見ているのに。
電車の窓から街のネオンや看板を眺めながら、果歩の心は、ここにいない。
ぷるぷる、ぷるぷる。
ジーンズから携帯の振動が伝わってくる。
(メール)
そう思うと、どうして。
目が熱い。
またパンダになるわけにいかないから、じっと我慢する。
混んでいる車内で、となりに当たらないように携帯を開く。
「今、どこ?」
隼人(はやと)からだ。
(返事してなかったな)
苛々(イライラ)してるよね?
素早く隼人に返信する。
「ごめん、電車」
打ちながら、画面がぼやけて涙で見えなくなっていた。