911の恋迷路
「陵って、9・11に巻き込まれて死んだ奴?」
(勇人らしいストレートな言い方)
果歩は首をかしげる。
(死んだんじゃなくて、行方不明なんだけど……)
隼人はボクシングをしていた事がある。
隼人の言葉のストレートパンチ。
「もう10年経つのに、今ごろ弟が、何いうてきたんか」
「会いたいってメールあって会ってきたの」
「あ?」
隼人の眉間にシワが寄る。
「お前、女ひとりで会いにいくんは危ないだろ。俺に相談せえや」
「うん、そうだね」
会って無事でよかったけどよ、と口を尖らせる隼人。隼人は腕を組む。
「本当に陵いう奴の弟なん?」
「うん」
隼人がくれたポテトをつまみながら、果歩は頷く。
「陵くんの携帯を持ってたの」
「10年前の?」
「うん」
ストローをもてあそびながら隼人は、あれ?と首をかしげる。
「陵って奴は、携帯を弟に渡して行ったんか?」
「アメリカに行くから置いて行ったんじゃない」
「え、メールとかアメリカにケイタイから出来んの?」
隼人は自分の携帯を取り出した。勇人もスマホだ。
「10年前は、海外からつながらなかったと思うよ」
「ふうん」
隼人は最近スマホに替えて、なかなか操作に慣れないらしい。
「10年経つと携帯も進化したわけだ」
しきりに感心している。