911の恋迷路

 
 「携帯の料金は口座引き落としだよね」

 「みんな、そうだろ」

 「だとしたら、陵くんの口座はまだあるって事だよね?」

 「死んだって、手続きをしなきゃ、そのまま残るだろ」


 確かに解約手続きをしなければ、携帯も銀行口座もあるのだろう。

 陵の携帯の料金は、たぶん陵の口座から支払われている。

 

 そして弟の慎が陵の携帯を持っている。


 気がつかなかった。

 

 (携帯で兄弟が連絡を取り合うことは、出来るよね)

 
 陵は、行方不明なんかじゃないのかもしれない。


 
 そんな考えが果歩を不安にさせる。

 (陸くんは弟としか連絡をとれない理由があるのかもしれない)


 

 2001年9月11日。

 (あの日、陵くんはビル爆撃に巻き込まれたんじゃ、なかったの?)

 次から次へと様々な考えが果歩に迫ってくる。

 「かほ」



 「果歩きいてる?」

 顔を上げると果歩の目の前で、紙ナプキンがヒラヒラ揺れていた。

 隼人が退屈そうに紙ナプキンで遊んでいる。

 
 
 「これから夕飯食べに行かない?」

 隼人のお腹が鳴って、2人はケンタルキーを出た。
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