911の恋迷路

 (はぁ、はぁ)
 
 クラクラする。

 沼田さんがあたしのコップでコーヒーを飲んだ!


 (……うれしい……)

 ありきたりだけど、

 うれしさが込み上げて、

 それからジワジワと妄想が膨らむ。


 カップのふちに沼田さんの唇が触れた……。

 喉が鳴る。


 ごくっ。

 (ガキみたいです、あたし)

 間接キスに、ドキドキしている子どもみたい。

 (このカップに沼田さんの唇が……)



 ああ。
 嬉しすぎる。

 
 亜美には、マイカップがキラキラと輝いて見える。

 「あ~昨日、おれが間違って、浜崎さんのカップに沼田のコーヒー入れてさ」

 
 固まっている亜美に社長が謝る。
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