911の恋迷路
隼人の告白<果歩視点>
今宵の月は満ちている。満月が空高く昇る頃。
果歩と隼人は池袋のカラオケ店に入った。
2人はルームに入るなり、荷物を投げ出す。
完全にリラックスモード。手際(テギワ)よく、店員に料理を頼む。
「隼人の好きな唐揚げ頼むから、サラダ注文していい?」
美容に気を遣う果歩には、サラダは欠かせない。
「適当に好きな食べ物、頼みな。俺はジンジャエールね」
言いながら、隼人は予約のリモコンを離さない。
歌うのは専(モッパ)ら隼人だ。
ボクシングをしていた頃、食事制限のうさをカラオケで晴らしていた。
だから隼人は歌のレパートリーが多い。
「さぁ歌うぜ!」
曲のイントロが流れて、隼人は勢いよく立ち上がった。
(ノリノリだな)
曲のサビのところで、店員が飲み物を運んできても、ひるまず堂々と歌いあげる。
(すご…)
腹式呼吸が出来ているからだろう、隼人の歌声は高低共によく伸びる。
媚(コ)びることなく、高らかに素直に勇人は歌い上げた。
果歩は運ばれてきたサラダをつつきながら、隼人の声に聴き入る。