911の恋迷路

 一通りお気に入りの歌を歌った隼人は、ドサリと合皮のソファーに身を預けた。

 「果歩も歌えよ」

 マイクを向けられて、果歩は困ってしまう。

 「いい声してんだから、歌ってみろよ」

 「何、歌おうか」

 「演歌とか?」

  フフフ…。

 渋いな、と2人で本を見て曲探しをしていた時。

 店員が追加のドリンクを持って部屋に入ってきた。

 
 
 その時だった。



 一瞬、ドアが開いて、近くのルームのカラオケの伴奏が、部屋に広がる。
 聞き慣れたイントロ。


 いつもなら、イントロ曲当てクイズで遊ぶのに……。

 バグパイプが響き、曲の始まりを告げ、チェンバロがメロディを継いで奏でられる。


 この曲は余りにも有名で。
 
 (あたしにとって切ない)

 隼人は黙って唐揚げを食べている。


 ドリカムの
『LOVELOVELOVE』

 (今日、何度聴いただろう)
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