911の恋迷路
濡れた前髪をそのままに、髪をポニーテールに束ねた果歩が洗面所から顔を出す。
色素の薄い焦げ茶の瞳。黒髪になぜか映える。
手を伸ばして隼人は果歩を抱き寄せた。
「疲れた顔」
(俺が疲れさせたんだけど)
変な満足感で、ゾクッとする。果歩の頬を指でなぞる。
果歩は隼人の肩から顔を上げる。隼人より背が低いために、上目遣いだ。
それがまた愛しい表情で、隼人は去りがたくなる。
「シャツが濡れちゃうよ」