911の恋迷路
浜崎亜美の選択<亜美視点>
9月12日午後。
亜美は三件の案件を選んでデスクに並べた。
沼田は亜美の選択した三件に目を通す。
「三件総て担当したい?」
尋ねる沼田に、亜美は説明する。
「三件同時は無理だから、右から順番に、担当出来るといいな、という希望順になっています」
亜美は慎重に言葉を選ぶ。
「第一希望から話そうか」
沼田はノートブックを開けて案件に目を通す。
亜美はデスクに置いた資料を再度読み直した。
「第一希望案件」
依頼主は独身の45才の男性。地方出身で東京で就職をして世帯をもつが、離婚。
ひとり娘は元妻と暮らしている。養育費は毎月、依頼主は元妻に払っているのだが最近、滞りがち。
妻と離婚した時期は仕事が忙しくパチンコでストレスを解消していた。
積み重ねたギャンブルによる借金が200万円。
妻と別れた原因は、この借金が発覚したから。