911の恋迷路

 「第二希望案件」

 
 「依頼は30才嫁。舅(シュウト)が犬の散歩で外出する時は最低3時間、家に戻らないよう引き留めてほしい」

 (はぁぁ)

 
 どんな犬の散歩だよ。3時間って。

 亜美は読みながら心の中で突っ込みを入れる。


 
 依頼主は、舅が嫌いなので外出時間を延ばしてほしいらしい。

 「散歩中に、立ち話して仲良くなれば可能かな」

 これは詐欺にはならないらしい。キャバ嬢の経験を使えるだろう。

 
 沼田は三番目の案件に目を通しながら言った。

 

 亜美がホッとするのも束の間、沼田の声が耳元で響いた。


 「これは、浜崎さんには無理……と思う」

 
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