911の恋迷路
沼田が自分の体験を話す。
「僕は、昔、兄を突然失った」
亜美が初めて聞く話だ。
「悪いけど……三番目の案件をしたいなら僕は手伝わない。僕ならば失った子どもの代わりを務めるのは、不可能だと思うから」
(知らなかった)
まだ亜美の知らない沼田の姿をもっと知りたい。
亜美は同情くらいしかできない。でも好きだから、もっと頼ってほしいと思う。
「分かりました、第2案件でいきますから手伝ってください」
沼田と一緒にいる時間をまず増やし、もっと沼田のことを知る機会を増やす。
まず沼田と仲良くなる。
それが沼田と付き合いたい亜美にとっては大事な事だった。
亜美は沼田への好意を胸に、第3案件をシュレッダーで刻んだ。