911の恋迷路

 午後過ぎから強風は暴風になり、クリニックは閑散となった。

 クリニックの受付時間を過ぎた時には傘がさせないぐらいの暴風になっていた。

 折れた傘が飛んでいく暴風。
 並木も折れてしかいそうなくらい傾げている。

 

 「やだ、怖い」

 仕事を終えた同僚たちは、クリニックを悲鳴とともに出た。果歩もそのひとりだ。

 (今日は約束を断ろう)

 携帯を出したとき、バランスをくずして、転びそうになる。


 怖いを通り越して危ない。


 しゃがみこむようにして、風を避けながら携帯を開く。

 

 メールが2件入っていた。

 1件は隼人の「大丈夫?」メール。

 
 2件目は慎だった。

 「今、ジョイフルにいます。びしょぬれです、気をつけて来てください」

 

 (来てください)

 慎が、びしょぬれ。

 びしょぬれになって果歩を待っていてくれている。
 嬉しい……。


 (ごめんね、隼人)
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