911の恋迷路

 (陵の事情を知らされなかったことがショックなんだ)

 
 でも泣きたくない。パンダ目になりたくない。悔しいから果歩は歯をくいしばり我慢する。

 

 薬を飲んだから、大丈夫。

 きっと、だいじょうぶ……。

 
 「その様子だったら、少しずつ話したほうがいいですね」

 
 慎は果歩を気遣うように言う。

 

 「ううん」

 気遣いなんて要らない。


 「沼田さん」

 おなかに力を入れる。ほら、しっかりして。果歩は深呼吸をしてから、言葉を刻む。


 「りょうくんに会うことはできますか?」

 「そうくると思ったんだ」

 


 慎は果歩が刻んだ言葉を噛みしめてから、返事をした。


 「……会わせるために時間をくれませんか」
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