911の恋迷路
疑惑

 陵の今について話さない慎を残して、果歩は怒りを胸に自宅に帰った。

 隼人が心配して自宅に駆けつけてもいいように。

 (電車が動いたら、隼人きそうだしな)

 

 果歩の予想は当たった。

 夕食を食べてくつろいでいると隼人からメールがあったのだ。

 「ようやく電車動き出した」

 
 続けて、

 

 「そっち行っていい?」

 (ほらね)

 隼人は考えていることが分かりやすい。

 

 (誰かさんと全然違う)

 ふと思いついたその人物を頭を振って消そうとする。


 (夕食食べちゃったあとだな)

 彼女らしいことをしなくちゃ、と果歩は思う。

 

 思ってから、「彼女らしい」という思惑で動くことに違和感。

 友達だった時間のほうが長いから仕方ないか。言い訳じみたことが頭の中をグルグル回っている。

 

 (慎に会ったことも話さないと)


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