911の恋迷路
白い磁器の皿にビーフシチューのこげ茶色が映える。ほかほかのシチューを目の前に、隼人の表情はゆるむ。
「いただきまーーーすっ」
元気よく言って食べ始める。
(かっこむ、という感じ)
電車待ちで腹ペコだったのだろう。勢いよく気持ちよく、シチューは隼人のおなかに入っていく。
せっかちなのは食べ方にもはっきり表れていて、果歩は思わず吹き出してしまった。
ほんの数分で食べきった隼人がお茶を飲みつつ果歩に訊く。
「今日、仕事からの帰り、ほんと大丈夫だった?」
「あ、えっとね」
「んん?」
「ジョイフルに寄ってから帰ったの」
「やっぱこっちも台風、凄かったんだな。雨宿り?」
「ううん」
(ちゃんと言わなくちゃ)
「沼田さんと会っていたの。陵くんのことで」