911の恋迷路
果歩は財布にしまっていた慎の名刺を取り出して隼人に渡した。
「こんなん、どうにだって作れるだろ」
「この会社に問い合わせてみようと思ってるの」
「うーーーん、それもあり、だけどさ」
「なに」
「果歩、沼田の実家の連絡先とか知らないの?」
(あ、そういえば)
果歩は携帯を取り出した。
アドレスを開く。「ぬ」の欄を見ると「沼田」という登録があった。番号は携帯ではない。
「たしか、これが陵くんの実家の番号だと思う」
携帯を替えてもアドレスのデータは引き継がれる。
「今、かけて訊いてみろよ」
「うん」
果歩はとまどいながらも、慎の身元を明らかにしたくてアドレスから電話をした。