911の恋迷路
「この電話番号は陵くん本人から聞いたんです」
「え?」と稔がひるむ。
果歩は深呼吸をして、説明した。
「沼田慎さんが陵くんの携帯を持っていて、そのケイタイからわたしに連絡があったんです」
気づけば「陵さん」ではなく「陵くん」に呼び方が変わっていた。もう気遣う余裕が全く果歩にはなかった。
「……」
稔は黙ったままだ。
果歩から携帯を奪い取るのは無理だと思ったらしく、隼人も耳をすませるように静かだ。
ようやく稔が吐き出すように出した言葉は、
「沼田慎が……兄の携帯を持っていた……」
という切れ切れの言葉だった。
憤りさえ感じられる、荒い息とともに、稔は繰り返した。
「ケイタイを慎がもっていた」
そして稔は絶句した。