†誰も知らない彼の顔†
”もしもし、夏帆?”
いつもと同じ彼の声が私の耳に届いた。
私は平然を装いながら…
「…うん。」
と声が震えるのを懸命に堪えながら
彼の次の言葉を待った。
”あぁ~、夏帆。悪いんだけど今日はやっぱり
無理っぽいんだよな~。”
え?…アナタハナニヲイッテルノ?
だって今、マンションに居るじゃない。
「な…何で?無理なの?」
少々、声が震えてしまったけどそんな事
今はどうでも良かった。
彼の口からただ、さっき見た事を否定して
欲しかった。
私は例え、彼が浮気していたとしても謝って
また私の所に帰って来てくれさえしたら良かった。
”仕事が入って、どうも抜けられそうにないんだ。
悪いな、夏帆。”
どうして?そんな事言うの?