†誰も知らない彼の顔†

通い慣れたその喫茶店はドアを開くとアンティーク仕様に
なっている。

―カランカラン

そこで、安心してしまったのか私の涙腺は緩んでしまい。

「…う”~マスター。。。」

23の女がこんなんでイイのかと自分でも呆れてしまうが
今の私にはどうしようもなかった。

奥から聞こえるクラッシクミュージックとともに優しい
声音が私の耳に響いた。

…マスター。このお店に来る人たちは彼の事そう呼ぶ。
私もその中の一人だけど。誰も彼の本名を知らないらしい。

年は多分私の5歳くらい上だとは思うけど…顔は物凄く端正な
顔立ちをしていて彫が深かい。本当に同じ人間なんだろうか?

「夏帆ちゃん!?…どうしたの?」

一瞬、驚いた顔をしたマスターだけど、すぐにいつもの優しい
表情で私をカウンターへと促しながらカフェオレを淹れてくれた。

…ここに通うようになってもう3年かぁ~

いつの日だったかな?…
仕事でミスを連発し上司に怒られ、取引先でクレームの嵐で凹んでい
る時にフラッと立ち寄ったのがキッカケでいつの間にか私はこの喫茶店
の常連になった。
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