夢宙〜私の初恋物語〜
「いや、華夏が叩いても可愛いだけなんだけど・・・」

ま、まぁ、可愛いと言われて嬉しくないことはないけど・・・・コイツは別!!
「今度言ったら、思いっきり蹴ってあげるから♪」

「はいはいご自由に。ほんでは、帰りますか」

「うんそうするよ。・・・おいしょ。ってあれ?」

あれれれれ・・・?

私、立てないんだけど・・・。

「もしかして、腰抜けちゃった?」

ミタイデス・・・。

「ククッ、やっぱり華夏は可愛いなぁ。もう少し家にいる?」

「アンタんち・・・に?」
「たっりまえじゃん。あ、でも、お母さんとかは・・・」

あー、そのことか。

「私、本物のお母さんいないんだ。なんか・・・重たい話になっちゃうけど、私のお父さんとお母さんは、私が4歳のときに事故にあって死んじゃったの。それで、お父さんのお兄さんに引き取ってもらったの。でも・・・・虐待にあったんだ・・・。だから、私、家出したんだ。それで、公園でホームレスしてるとき、今の家族に引き取ってもらったの。それでも、私のことを認めてくれているのは、美奈子《みなこ》さんっていう、お母さんだけなんだ。名字は、旧姓なの。どうしても、『種田』は捨てられなかったんだ・・・・。あ、な、なんか、長々とごめっ・・・」

抱き締められている。そう気が付いたときには、奏芽がしゃべっていた。

「つらかったよな・・・1人でココまで頑張って。そんなに小さな体でこんなにでっかいこと詰め込んで・・・・」

「っ・・・」

なんで、コイツは、私が泣くときはいつもそばにいるの?

なんで、傷を抉るようなことを言うの?

人前では、泣きたくないのに・・・。

「泣いていいよ。華夏が泣いてる間、なんか喋ってるからさ」

その言葉に、なにかが切れたのだろう。私は、おお泣きした。プライドなんか、捨てて。

そして、私が泣いてる間、奏芽は本当に喋っていた。
奏芽は、生まれてすぐに捨てられてしまったんだって。そして、ずっと自相に居たんだって。見るに見かねさ園長さんが引き取ってくれたらしい。それで、高校から独り暮らしをはじめたんだってさ。

こんなの、私よりも悲しい過去じゃんか。
< 9 / 13 >

この作品をシェア

pagetop