マスカレード【仮面de企画】
暗闇でキスを―羽竜 巧
無線のヘッドセットが入った。


――羽竜? ちょっと来てくれ。サイドAだ


夜光(やこう)の声の後ろから女の声がする。

少し早口の、よく聞き慣れた声。

マイクを通したって聞き違える訳がない。


はぁ? 何であいつがここにいるんだよ


俺は急いでサイドA――つまり大ホールを見渡せる吹き抜けの上階へ行った。


ああ、やっぱりあいつだ。


オフホワイトのロングドレスを着た金髪の女が、プロの要人ボディーガードの夜光に取り押さえられている。
顔は白いハーフマスクで覆われているが、俺が見間違う訳がない。


「夜光、そいつが何をやらかしたか知らんが、手荒く扱うなよ」


「馬鹿を言うな」

俺と同じく、黒いタキシードとドミノマスク姿の夜光が言った。

「あの方に近づこうとしたんだ。しかも何か用かと尋ねたら、『そちらの王女様が狙われている』とまで言った。怪しいだろう」


あちゃー


「だから、わたしは占い師なんだってばっ!」

「お前が占い師なら俺は魔法使いだ、美幸」

「ええっ! 何でわたしの名前知ってんの?」

「俺だよ。声まで忘れちまったのか?」


俺はドミノマスクを外して見せた。


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