瑠璃の羊
廊下でひとつため息をつくと、ちょうど玄関から入ってきた男子生徒と目があった。
名前は知らない。制服の学年章は後輩。
彼はわたしの顔を見て、それから手を見て、さっと顔をそらした。
わたしが知らなくても向こうは知っているのだろう。
そそくさとわたしの前を過ぎていく。
その間際に見えた口元が歪んでいた。
先輩は敬いましょう。そんな学園理念は、ジーンリッチの中でしか適用されない。
白い羊と瑠璃色の羊。
そこには明確でいて越えられない壁があって、けしていっしょくたにはなれやしない。
つまり、彼はジーンリッチだ。
「ニイ」
背中から再びキッカの声がする。
「まあ、のんびりね」
彼もそう。日本での第一世代。
見た目だけの、ジーンリッチ。