瑠璃の羊
ということはすなわち、めずらしいことに出会ってしまったのだ。
こんな田舎道を走る、ちょっとさびれたクラシックカーに。
そのクラシックカーは道に停車していて、運転席に座る人間は窓の外を見たり地図らしきものを見ていたりしていた。
道に迷ったのだろうか。
あやしい雰囲気はないものの、今時見ないクラシックカーと、誰もいない道に迷うことがセットになって、気づかれる前に退散しようかな、と考える。
やっかいごとに巻き込まれるのはごめんだ。
ただ、こんなだだっぴろい田舎。わたしの姿は何に隠れるわけでもない。
そう考えたときには既に、運転席の男と目が合ってしまった。
その上、ドアを開けて降りてきて、手を挙げられたのだから、もはやしかたがない。
まっすぐの道をいつものスピードで歩く。
初老の男性はにこやかに「すみません」とわたしに小さく頭を垂れた。