瑠璃の羊
皮の手袋がきゅっと鳴る。
わたしは部屋へと続く階段へと足を乗せた。
頭のなかに、瑠璃色の羊が浮かんでくる。
知っている。ナギ・ユズリハもジーンリッチだ。
それでもわたしはその名に恋をした。
それぐらい、あの絵には惹かれるものがあった。
詩がある絵、そういう表現を読んだことがある。
それならばあの絵は「詩をつむぐ絵」だと思う。
ジーンリッチは恋に落ちない、愛さない。
だからわたしは恋をしたのだろう。
わたしは出来そこない、失敗作。
本当は彼らと同じに生まれてくるはずだったのに、そうはならなかった欠陥品。
生まれてすぐに出された判断は、一生消えることのない烙印だ。
そう、ほんのすこしだけわたしは謹慎処分を下されたことを喜んでいる。
わずか一週間とはいえ、家に帰らなくて済むのだから。
もちろん、帰ったら友人にも会える、懐かしい風景のなかにいれる。
それでも、あの両親のもとへ長々と滞在するのは、遠慮したい。
嫌いなわけじゃない。息がつまるというのが正しい。