瑠璃の羊
わたしはそのあと、散歩を再開して、すこし遠出した。
なにをしにいくわけでも、見たいわけでもない。
ただ誰にも会いたくなかった。家にはいたくなかった。
知ってしまった、半端な気持ちにもやもやしながら、土のうえを歩く。
こんなに空は青いのに、高いのに。雲は真っ白で、山は緑で、色とりどりの花が咲き、きれいな羽根をした鳥が飛んでゆくのに。
ぬるい風にのって、耕したばかりの畑のにおいがやってくる。
どこかであたらしい種を播くのかもしれない。
夏休みが終われば、再開される生活がある。
そこにたのしいものはなくとも、わたしの日常が戻ってくるというのに。
わたしはいま、ゆらゆらとした不安定なものの上にいる。
もしくは曖昧な境界のひかれたその真上。
どちらに転ぶか、まだ決められなくて必死にバランスを取っている。