瑠璃の羊
 
制服のままだった。

また誰かがご丁寧に連絡してくれるかもしれない。

それでもいい。一度謹慎をくらった身だ。

そんなことよりも、見つけたいものがある。

 
外に出ると、まだ日は高かった。

排ガスの匂いと人間の匂い。それらが混じって鼻をつく。

学園のなかとは違う世界。
 

歩道をゆくひとの間をぬって走る。

はやく、はやく行かなくちゃ。

そのタイミングを逃していたら、きっとわたしは後悔するから。

 
国立美術館の前にはたしかに『全国高校生絵画展覧会』という掲示がされていた。

窓口へ向かい、学生証を提示するとお姉さんには少々怪訝な顔をされたものの、入館パスを発行してくれた。
 

それを持って、入り口の案内パンフレットを横目に中へと入る。

あの日彼が昇った階段に足をかけ、会場へと向かう。
 
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