瑠璃の羊
くすくすと笑う声が耳に届く。
聞くんじゃない。わたしの心がそう脳に指令を出す。
「お似合いね」
通り過ぎる瞬間、そんな声が聞こえた。
お似合い? 一体何が。
「落ちこぼれどうし。ま、もっとも君はそもそもが違うわけだけれど」
「みんな酷いなぁ。彼らがいるから、僕たちの優秀さが際立つんじゃないか」
別の声が会話を繋げていった。
皮肉なことに、人類は遺伝子操作を覚えたといえども身体は何も進化していない。
視覚も聴覚も、自分でシャットダウンすることは出来ない。
美醜、優劣、そんなのにこだわるぐらいなら、人間という生物自体を成長させたらいいのに。
でもきっと、それでもわたしたちの間には平穏は訪れない。
ほんとうに平和が欲しければ、きっとみなの意思を統一してしまう他にないだろう。
残念ながらそのときは訪れない。
だからわたしたちは、不平等と矛盾に溢れた世界で生きていくほかないのだ。