先生とわたし
「もし智クンが全然持ってくれなかったら、どうしよう…。」
かなり琴音が落ち込んでいる。
「その時は聞きに行けばいいじゃん。千華チャンは嫌でも授業持ってもらえないんだし…。」
「そうだったね。」
今年の理科は、選択で物理か化学。
祐チャンの専門は生物だから、もう授業で会うことはない。
別れたんだし、会わない方がお互いにいいのかもしれないけど…。
「噂をすれば、祐チャン来たよ。」
「千華チャン良かったね☆」
「うん。」
本当は、あまり会いたくなかった。
「もしかして、祐チャン機嫌悪い?」
「そんな事ないと思うけど…。」
石黒先生みたいに話しかけて来ないで、教卓に座っている。
「千華チャン、何かあった?」
「特には…。」
機嫌悪いとしたら、祐チャンに内緒で美咲サンに会ったのが原因かな…。
それとも、私が別れてる気でいるから?
もう、分かんない。
「怒られる前に戻ろ。」
「う、うん。」
予鈴がなってすぐ、舞チャンの席から撤収した。
祐チャンは、ずっと一点だけを見つめてる。
最悪な事に、私の席は教卓の目の前の列だから、祐チャンと目が合ってしまう。
そんな不機嫌な顔しないでよ…。
英語も少し苦手な教科だから、時間より前に終わってしまった。
さすがにもう機嫌直ったよね…。
ふと顔を上げると、目が合った。
相変わらず不機嫌なまま。
やっぱり、私が原因なのかな…。
「止め。後ろから回収して。」
私に原因があるなら、何もみんなの前で不機嫌になる必要ないじゃん。