千寿桜―宗久シリーズ2―
桜の誘い
僕は、闇の中を歩いていた。




闇と言っても、陰湿な感じは無い。


地上から見上げる宇宙の様な藍色の空間、とでも言えるだろうか。




違和感どころか、逆に懐かしい清涼感さえ感じている。








足元、長く続く細い道。




誰も居ない。


ただ、道なりに歩く。


この先に何があるのか、そんな好奇心だけに突き動かされている。











どのくらい歩いたのだろう。




いつまでも続く道。



同じ道を、何度も通り過ぎている様な感覚が襲う。







不安に駆られ、ふと視線を先に向けると、光が見えた。




行き止まりの先にあるだろう光は、闇に浮かぶ大きな恒星の様。






それは、歩を進めるごとに、形として現れる。











満開の桜の木だ。






古い、古い、幾百年もの時を生きているだろう、桜の大木。





太い幹は、勇ましい程に大地を噛み締め、扇状に広がる枝は、悠々と伸びをし……。




時代の重みを感じさせるその存在感は、まさに威風堂々たるものだ。






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