千寿桜―宗久シリーズ2―
僕自身、友人の人間性には興味はあるが、その背景までを聞いた事はない。




聞かずとも見えるからだ。




悪いものには関わらない、それを、人の背後を見て決める僕に、友人は多くはない。



それでいいと思う。






危険だと知りつつ飛び込む勇敢さとは、僕は無縁だ。



そんな無謀を避けたいのは、当然の心理だろう。









危険回避能力。





ただ僕は、それが普通よりも敏感なだけだ。









今回、こうして工藤の誘いにのった時、そういった危険自体は感じなかった。







だが、何かが起こりそうな予感は感じていた。



それが見える場合もあるが、今回は見えない。




見たのは、あの桜の夢だけだ。








「工藤」

「何だ?」

「この町に桜はある?」

「桜?たくさんあるが」

「樹齢数百年とか、そういった桜の大木」






質問に、工藤は小さく唸った。







「千寿桜かな」

「千寿…桜……?」








どくんと、胸が鳴った。




あるのか、桜が。







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