千寿桜―宗久シリーズ2―
こうしている時も、どこかでは戦が起き、人命が失われている。




この地は、隣の領主である森山と協定を結んだ今、こうして平和な時間が過ぎてはいるが、それまでは小さな小競り合いが絶えなかった。



父上もいずれはどこか大きな武将の元につき、そして俺も、天下取り合戦に加わらなければならないのだろう。




その為、父上は多忙だ。


山と海に囲まれた小さなこの土地でも、天下の流れに逆らってはいけないのだから。






俺は、戦いは嫌いだ。


だがそれでも、尊敬する父上の為ならば、この身を捧げようという気持ちはある。



武術の鍛練もその為。







父上が好きだ。

この土地が好きだ。



俺が動く理由はそれだけだ。




だが、この地に戦を招かずに済む方法があるのならば、俺は迷わずそちらを選択するだろう。









「どの武将につくかで、先が決まるでしょう。采配は殿にお任せするしかありませんが……」



ですがと、源三郎は声を潜めて苦笑いをした。





「信成様が、何やらまた色々と……」

「……兄上か」



眉をひそめ、俺は上半身を起こす。

.
< 100 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop