千寿桜―宗久シリーズ2―
兄の信成は野心家だ。

何やら色々な噂は聞いてはいたが。




家督を継ぐのは兄上であるのだから、俺がとやかく言うつもりは無い。

だがもし、父上に仇名す画策を練る時には、見過ごす訳にはいかない。



その為、行動を探る必要はあるだろう。






兄上には、不安な点が多々ある。



周りに左右される面が見られ、己の意思が弱い事。

感情的であり、怒りに身を任せる性格であり、無情な事。

己を正当化する傾向にある事。


だが、何より不安であるのは、兄上が敬愛している義兄の存在だ。




兄上の妻、香也姫の兄。

八嶋家とは遠縁にあたる家系であり、山側の領地を任せている。



その義兄である定盛が、何やら兄上に色々と吹き込むらしいのだ。






俺と源三郎の不安の種はそこだ。









兄上が八嶋家の家督を継ぎ、この地を統治する。



それが、定盛の願う所ではないのかと。



兄上は、定盛に操られてしまうのではないかと。





今でさえ、定盛に意見を求めているのだから。



いや、自身が定盛の代弁をしている事実に兄上は気がついてはいないのだ。



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