千寿桜―宗久シリーズ2―
何かにつけ、兄上の口を通じて便宜を図ろうとする男。



物知り顔で、薄っぺらい知識を披露したがる。



何よりも、他人を蹴落とし中傷し、自身を大きく見せ様とする見せ掛けの強さを誇らしげに語る事が気に障る。





虚栄心と野心、それが尊大さとなり、嫌らしい程に溢れている。





今は兄上の腰巾着程度であるが、この先どうなる事か。



不穏な者は、早い内に切り離すべきだと感じる。







「兄上のお考えは、定盛の狸の考えだろう」

「真にこの地の先を考える志ある者は、真摯に耳を傾けてはおりません」




耳を傾けぬ、か。




「だからこそ、保明様に家督をと願う者がいるのは、至極当然でしょう」

「………またその話か」






家臣の中には、俺に八嶋の家督をと申す者が増えているらしい。



その先鋒が源三郎であるのだから、どうしようも無い。





当然、兄上の知る所でもあるから、俺が兄上に嫌われ、煙たがられるのもうなづける事実だ。









だが、長子は兄上だ。


兄上が継いだ暁には、出来る限り助力は惜しまないだろう。





.
< 102 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop