千寿桜―宗久シリーズ2―
定盛の存在は気にかかるが、俺に家督を継ぐ気は無い。





「俺にその気は無いぞ。大体俺が八嶋を継いだならば、武士であるお前達から仕事を奪うだろう」

「戦わない、ですか?」

「ああ、戦は嫌いだ。例え腰抜けと言われ様が、戦わずに済む方法を取る」









この地を愛している。




この地の景色を愛している。








壊すくらいならば、腰抜けの汚名くらい何枚でも着てやろう。









「戦わない、できますか?今の世で」

「戦う意味は、守り。ならば戦わぬ意味も同様であろう」







ふぅんとうなづき、源三郎はにやりと意地の悪い笑みを端正な顔に浮かべた。









「論としては、ですね。失礼つかまつりますが、世の中の局面から流れを見るならば、保明様のお言葉は甘っちょろい戯れ事です」









甘っちょろい戯れ事……。








思わず、瞳を細めた。





茶をすする源三郎を睨み上げる。








「おい、源三郎……」


「ですが…」




言いかけの俺の声を止め、源三郎は咳ばらいをして見せた。






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