千寿桜―宗久シリーズ2―
変わらずこう言い、こいつは笑う。






その笑顔は穏やかで、人好きのする笑顔で、だがその奥には、深い深い情が見え隠れしており……。





源三郎は必ず、俺の為に己の命を盾にしてしまうのだろうと……本当に…そう感じてしまうのだ。









いつも、側に居た。




変わらず、俺に添う源三郎。





兄の様に、親友の様に。







その存在自体に、安堵している俺が居る。




忠義よりも何よりも、源三郎がここに居る事が当然なのだ。







源三郎が俺の為に死ぬ………考えたくは、無い。











「源三郎、俺より先に死んだなら、俺はお前を許さぬ」





はい?と源三郎は、形良い眉を跳ね上げた。








「それは無理でございましょう。私は保明様よりも早く爺になる訳で……」

「死ぬなと言ったら死ぬな。それでも先に死ぬ時は、手の届く所で死ね。死ぬと伝えてから死ね」





「……おっしゃっておられる事が目茶苦茶です」

「うるさい、命令だ」

「我が儘な保明様ですねぇ…」




それでもなぜか、源三郎の笑顔は嬉しそうに見えた。
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