千寿桜―宗久シリーズ2―
「それ、もしかして…濃い色の花が咲くんじゃないか?」

「え?ああ、普通の桜とは違うな。桃の花と間違うくらいの色だけど。宗久、知ってるのか?」




「……まぁ、少し」








言葉を濁した。




早くなる、心音。





おそらく、いや、間違いない。


夢で見た桜の木だ。








やはり、導きだった。



あの夢は、桜が呼んだのだろうか。







ならば、あの女性は誰なのだろう。



明らかに、現代に生きていた人では無い筈。



桜の精霊だろうか。






そんな気配では無かった気もするが。







千寿桜…か。









「その桜、見れるのか?」

「実家の裏山にある桜だから見れるぞ。小さな神社の境内にあるんだ。今が満開の見頃かもな。でもさ宗久、俺のお勧めは桜よりも〜……」








その後に続く、工藤のお勧めである、美味しい酒や新鮮な魚介類の話は、僕の耳には届いてはいなかった。






ただ、夢で見た満開の桜だけが、僕の期待と思考を揺るがしていた。






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