千寿桜―宗久シリーズ2―
千寿……。


それだけではいけないのか?




俺が自身で、お前の奥底の悲しみに気付かなければいけないのか?


話してはくれないのか?


向き合ってはくれぬのか?








なぜ、生意気な態度を取る。


なぜ故意に、怒りを買う様な言葉を吐く。


なぜ俺に笑顔を向けてはくれない。






なぜ……その様な悲しい瞳で………雨に打たれている?







千寿。


お前の行動はまるで……己を恨み、消したがっている様だ。








だからお前は自棄だと言う。


一人きりで何かを抱え、心を閉ざす………そこが生意気なのだ。






だから、腹が立つのだ。





気になるのだ。











足踏み状態にあった歩を、千寿へと近付けていく。









小さな背………。




その背を、握りしめた傘で庇う。








腹が立つ。



己にも、千寿にも。








だが今の俺にできる事は、雨を避けてやる事だけなのだろう。









「……何をしている」







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