千寿桜―宗久シリーズ2―
何だと言うのだ。



雨に濡れながら積み上げるその石に、何の意味があると言うのだ。







腹立たしさが膨れていく。



なのになぜ、俺はこの場から離れられないのだろう。









期待………。



期待かもしれない。







千寿が何を見ているのか、それを知れる期待。







「まじないでは無いのなら、それな何なのだ」

「お聞きになり、どうするのです」

「ただ知りたいだけだ」

「なぜ、お知りになりたいのです」





聞き返してくる千寿。






「お前こそ、なぜそう聞き返してくる」

「あなたがお聞きになるからです」






………言いたくない、と伝えたいのだな。






顔を背け、小さく舌打ちをした。


本当に可愛げの無い……。



今更だが。









「言いたくないのならばもう聞かぬ。だが、雨に濡れるのはよせ」








うづくまる千寿の隣に、傘を置いた。






千寿はふと手を止め、ぱらぱらと雨の音色を奏でる傘を横目に見つめている。






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