千寿桜―宗久シリーズ2―
「…………」




言葉が、喉元に込み上げてくるのを感じていた。




だが俺は、それを発する事が出来なかった。





千寿の姿が、その佇まいが、俺の動きを止めているのだ。









無力だ。





己が無力と、初めて感じた。










千寿………俺はお前に、何が出来る?









見つめ合う俺と千寿……。








打ち付ける雨が、心地よい筈の雨音が…痛い………心が痛い………。








ただ、千寿の足元に散らばる、崩れ果てた小石だけが、気持ちよさ気に雨に濡れていた……。










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