千寿桜―宗久シリーズ2―
真実 5
梅雨時の晴れ間は貴重だ。


湿りきった空気を一新してくれるからだ。





ここ数日降り続いた雨に、梅雨空に、いい加減退屈していた俺は、馬場の前にて座り込み、トキの鞍の手入れをしていた。






時折手を休め、空を見上げる。





流れる雲はまだ多いが、蚊帳の様に薄い雲の隙間から清々しい青が見えると、自然と気持ちが和む。




この薄青の色は、近々訪れる梅雨明けの前兆だ。


湿りきった身体を乾かすには丁度良い。








隣では、当然の様に源三郎が居る。


俺と同じく、古布で愛馬月尾の鞍を磨いている。






源三郎の愛馬は、牝と言えども侮れない。

なかなかの駿馬だ。


度胸もあり、戦となれば先陣を切り前へと走る。






金色を帯びた尾毛が、走ると光を孕んでたなびく、それが月の放つ光に見える。



故に、名が月尾。




月尾は難しい性格で、源三郎以外の者がその背に乗ると振り落とすのだ。





源三郎は、人間の女だけでは無く、牝馬にまで好かれているらしい。


一番付き合いが長い女が牝馬と言うのも皮肉だな。






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