千寿桜―宗久シリーズ2―
海沿いに建つ工藤の実家は、考えていた以上に立派だった。



お屋敷、と表現する方が適切かもしれない。







屋根瓦を乗せた重厚な門をくぐると、そこはまるで、日本庭園の様だ。




松、もみじ、梅、様々な木々が植えられた趣のある庭。



中央には池があり、丁寧な竹造りの鹿脅しまである。



まさに、侘・寂・風流の世界だ。








いい庭だ。



念入りに手入れがされている事は、彼等の声でわかる。



それぞれの木々、草花の美しさが、清らかな景色として存在感を醸し出している。




互いの美しさを引き立て、共存している。







逆に、僕の実家の庭は、伸び伸びとしすぎているのかな。




わがままに育てすぎているのかもしれない。




まぁ、個性的なのは仕方ない。



住んでいる人間がそうなのだから。












車は石畳の上を低速で進み、隅の駐車場に停止した。







先に降りた工藤に続き、僕も助手席のドアを開く。





数時間ぶりの地面を噛み締め、伸びをした途端、春風に揺られて庭がざわついた。







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