千寿桜―宗久シリーズ2―
千寿は、賽の河原と言っていた。



雨の中、小石を積み上げ……そうしてそれを、自らが壊し………。





意味……意味があったのだ。





親よりも先に死んだ子供が積み上げる小石、三途の川にある賽の河原。








だが……千寿は生きているではないか。






不可解だ。


どの様な意味を示している。





何を供養している?


誰の幸せを願う?





千寿……お前は一体何をしているのだ。





「賽の河原がどうかなさいましたか?」



首を傾げ、俺の表情を伺う源三郎。



話してみようか。


口の堅い源三郎にならば、話しても良いだろう。






「千寿が言っていたのだ」

「姫が?」




ひょいと上がる源三郎の眉を見つめ、俺は言葉を続けた。






「雨の中、千寿はそこにある桜の下で小石を積み上げておったのだ」



馬場の裏、その屋根に日影を作る桜の枝を指差す。


源三郎の瞳が、その指先の先を追う。




「千寿に問われたのだ、賽の河原を知っているかと……積み上げた小石を、自ら崩しておった」






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