千寿桜―宗久シリーズ2―
俺の七年上であった源之助は、元服を間近に控えた春の終わりの頃、静かに若い命を閉じた。




桜の花が散ると同時に……兄や姉、両親よりも先に逝ったのだ。






兄が二人、下には二人の妹、その下に生まれた身体の弱い末の弟を、源三郎は可愛がっていた。


その溺愛ぶりに、幼かった俺がやきもちを妬いた程である。







亡くした当時の源三郎の悲しみは、見るに見兼ねるを通り越し、見るに堪えないものであった。




涙も枯れ果てた………憔悴しきった生気の無い瞳は、このまま源三郎までもが死んでしまうのではないかという不安さえ抱かせた。










「源三郎は死にたいのか?」









痩せてゆく源三郎に、俺はそう問いかけた。



幼いなりに、源三郎の危機感を漠然と感じ取っていたのかもしれない。








「源三郎は死ぬのか」







源三郎は、潤いの消えた瞳で俺を見つめた。



痩せこけた頬を無理矢理引き上げ、笑った。







「死にませんよ……」


「そうか、ならば良い」





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