千寿桜―宗久シリーズ2―
「思うに、賽の河原とは、残された者の強すぎる嘆きや悲痛から作られているものかもしれぬぞ?
その重い悲しみを背負わされた子供が、小石を積み上げる事で慰める試練を与えられているのかもしれぬぞ?
ならば、源之助はおらぬ筈。源三郎が丈夫であり、笑っている限りはな」







そうだ。








千寿の行動に悲しみからの意味があるのならば、いつかは軽くなると信じたい。


いつかは、俺を見てくれると……そう信じたい。






今すぐにどうとは出来ないが、焦らずとも良いのだ。


俺は、俺に出来る事をすればいいだけの事。









俺は生きている。



千寿も生きている。




生きているならば、必ず先が在る。







これから千寿とは、長い時を過ごしてゆく。


そこに繋がりや絆を求めるのならば、少しずつで良い。




それで良い……。











俺を見つめる、驚きに満たされた源三郎の瞳。



やがてそれは、喜びに満ちた笑みへと変わる。





「………大人になられましたな、保明様」


「……何をしみじみと申しておるのだ」





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