千寿桜―宗久シリーズ2―
皆一様に、源三郎を誉めるのだ。




そうしていずれ、女達に好きな男ができれば、源三郎は笑い、幸福にと言う。







わからん……さっぱりわからん。






「私は、女の成長を見守る類の男ですから」





源三郎の見守るの意味、浅いのか深いのか……全くもってわからん。











相変わらず鼻歌に興じる源三郎の横顔に、呆れにも似た溜息が漏れる。







視線を、水に浸された足元に移した。








穏やかな流れに合わせ、足の輪郭が揺らめいている。



木陰から差し込む光が、水面に輝きを彩る。









平和だ。


そう思いたい。








思えないのは、ひしめき合う世が現実だと知るからなのだ。







父上は、情報を集める事に懸命だ。





当然だ。



選択を誤れば、この地は必ず戦場になるだろう事は言わずとも明白。





この今在る美しい景色も、遠い影になり消える。






八嶋は戦に弱い訳では無い。


事実、確実に領地を広げてきた。



森山に対しても負け戦は無い。




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