千寿桜―宗久シリーズ2―
だが、多勢に対しては無勢にも成り得る。





ここは、より強い武将に着くが得策。


父上の案は正しい。






だが、俺は政(まつりごと)には関わってはいない。




気楽な次男坊だ。



しかし、この地を愛する思いは父上同様。






口出しをしないのは、兄上が良い顔をしないせいもある。









以前、父上が政について俺に意見を求めた時があった。







その時の兄上の表情は、今でも鮮明に浮かび上がらせる事ができる。






兄上は、激しく俺を睨みつけていたのだ。




恐ろしい形相で。


出過ぎるな、お前には関わらせんと……その視線は訴えていた。







落胆した。




そこまでに、俺が憎いのかと。







いつからだろうか……兄上が俺を、あの様に憎悪を含んだ目で見る様になったのは………。









家臣達が評価するに、俺は兄上よりも学問にも武術にも長けていると言う。






素直に、俺は嬉しかったのだ。




比較されているとも知らず、ただ素直に、兄上に追い付いていける自分が誇らしかった。






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