千寿桜―宗久シリーズ2―
この地は海にも面している、決められた地との交易はある。



物売りは珍しくは無いが、決められた地からの物売りのみが商売を許されている。



見慣れない者は、それなりに目立つのだろう。






それに……脇差しが気にかかる。


物売りが携帯する物では無い。









「父上には知らせたか」

「私の父が報告を済ませている筈です。その者達の通行許可書も、調べている頃でしょう」

「そうか…」









源三郎は、こういった情報をよく仕入れてくる。



大部分が町の女からだが、それに助けられているのも事実。






兄上にけむたがられている俺には、情報は降りてはこないからだ。






こうして、源三郎を通じて情勢を知るのは、やはり俺も八嶋の人間……武士だからだ。




手を打てる事ならば、水面下に沈む内に叩く。






兄上にいらぬ事を吹き込む定盛の存在も、俺にとっては退けるべき事柄だが、今の所は成す術が無い。





何か離す理由は無いかと、源三郎とも話す時はあるが、ずる賢い者程隠れるのが上手い。








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