千寿桜―宗久シリーズ2―
その瞳は遠くを見つめていて、俺はただ、その小さな背を見つめる事しかできない。







声を掛けられないのだ。




その雰囲気は切ない空気となり、千寿を包み込んでいるのだ。








美しく、そして儚く、ただ空を見上げる千寿。




誰も受け入れぬ、誰の優しさも受けぬ……と。







何を見つめているのか、何を思うのか、俺には未だわからない。




それでも俺は、希望を抱いてしまう。









いつか千寿の瞳が、俺を見てくれるだろう事を。



いつかは、理解し合える時が来るだろう、と。









女々しい………そう感じる。




だが、それが俺の想いであるのだからどうしようも無い。










「どうかなさいましたか」




桜を見上げ、立ち止まる俺を源三郎が振り返り見つめていた。










「いや、何もない」





笑い、首を振る。






浸っても仕方が無い。







待つ……。



そう決めたのだから。









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