千寿桜―宗久シリーズ2―
「私め等は武術に長けてはおりませぬもので、軽快に動けるお若さが眩しく思えますぞ?」







そんな事は、見れば理解できる。






俺は、定盛の肉の集合体とも言える身体を眉ひそめ睨む。










「……………ふふ」







突然湧いた、微かな笑い声。








顔を上げた。







意地の悪そうな、何かを企む子供の様な笑みを浮かべる源三郎が見えた。








「武術は武士の砦でございますぞ、定盛殿。軽快さは鍛練あって身につきます。いかがですか?試しに、私とお手合わせ等…」









………始まった。



源三郎の、定盛へのからかい。





手合わせ等せずとも、実力の差は明白であろうに。











「あの狸を見ると、どうにも胸がむかつきましてねぇ…何か仕掛けてやりたくなるのですよ」




以前、源三郎はそう言っていた。




その面では、俺は源三郎の理解者だ。







表立って嫌味を吐けない俺に代わり、源三郎が定盛に食いかかる。





まぁ……面白半分もあるだろうが。







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